
2025/02/13
運用会社への気候対応強化要求:年金基金の長期的視点が示す方向性
アメリカやオーストラリアなど26の金融機関および年金基金(運用資産規模合計1.5兆ドル)が、資産運用会社に対し気候変動対策の強化を求めています。
このグループには、英国の主要な年金プロバイダーや地方政府関連の年金基金が含まれ、資産運用会社が企業と積極的に気候リスクを話し合うこと、そして具体的な行動を促すことを期待しています。
もしこれらの期待に応えられなければ、契約を打ち切ることも選択肢に含まれるとしています。
気候変動が年金基金にとって長期的な財務リスクとなり得るため、この課題を無視することはできません。
特に、年金基金のような長期の運用期間を要する機関投資家は、未来のリタイアメント給付を考慮し、気候リスクを軽視する資産運用会社に任せ続けるわけにはいかないという姿勢を鮮明にしています。「短期的な政治的課題を超え、気候変動の長期的な財務的影響を重視する必要がある」と年金基金の代表者は述べています。
この要望には、資産運用会社が株主総会での投票行動を含むスチュワードシップ活動をより組織的に行うことが含まれます。過去の調査によれば、多くの資産運用会社がクライアントの長期的な投資目標に適合しない投票行動をとっており、この点の改善が求められています。また、気候変動問題を解決するための行動が不十分であれば、契約内容を見直し、他の運用会社への移行も視野に入れるとしています。
一部の運用会社は気候変動への取り組みを巡り、産業界の連携を断ち切る動きも見られます。例えば、これまで気候行動を推進してきた国際的な協議会から一部の大手運用会社が離脱する例が相次ぎました。こうした動きに対し、年金基金のグループは一貫して、クライアントが求める長期的な資産形成と価値提供に応じた行動を求めています。

全体として、この取り組みは、気候リスクを無視し続ける運用会社に対する警告であり、またクライアントの財務的な持続可能性を保つための措置です。長期的な視点を重視し、責任ある運用を行う運用会社の選定を通じて、年金基金は将来のリスクを低減しながら資産形成を推進しようとしています。
日本においても、資産形成や投資の文脈で気候リスクを捉えた取り組みが重要です。しかし、現状では気候リスクを意識した投資戦略が必ずしも一般的ではなく、投資家の関心もまだ限定的です。一部の金融機関や年金基金がESG投資やサステナビリティを重視し始めている一方、運用会社との連携や気候リスクを明確に反映したスチュワードシップ活動が遅れているという指摘もあります。
さらに、政策面でもESG投資を後押しする具体的な税制優遇やガイドラインが他国に比べて弱く、結果として長期的な資産形成を促進する動きが十分に加速していない状況です。これからの課題は、投資家教育の強化や資産運用会社へのアプローチを通じて、より広範な層が気候リスクを考慮した資産形成を進められるようにすることです。そのためには、個人投資家や機関投資家が共通の目標を持ち、長期的な視野で運用を考える文化を育てる必要があります。